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プレスルームPRESS ROOM

飲酒者向け防災啓発プロジェクト「お酒好きのための防災プロジェクト」始動

ニュースリリース

2025-12-04

第一弾テーマ「酒場における安全確保の声かけ」
北海道文教大学 當瀬規嗣教授が専門協力 / 日本音響研究所、備え・防災アドバイザー高荷智也氏が監修

「よなよなエール」などのクラフトビールを製造・販売する株式会社ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)は、“飲酒しているときの防災”に焦点を当てた飲酒者向け防災啓発プロジェクト「お酒好きのための防災プロジェクト」を始動します。第一弾では、居酒屋やバーなどのお酒を提供する飲食店(以下、酒場)における安全確保の声かけ(身を守る行動の呼びかけ・避難誘導、指示など)をテーマに取り組んでいきます。「酒場における適切な安全確保の声かけの方法が分からない」という問題に対して、酒場における適切な安全確保の声かけをまとめた「酒場のための地震防災ガイドライン」を、備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー高荷智也氏監修のもと策定しました。従事する酒場の情報をWEB上で選択することでオリジナルのガイドラインを作成することができます。また、「酒場のような騒音環境下で声が届きづらい」という問題に対して、酒場でも届きやすい3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する高い声に変換される酒場のための防災用電子メガホン「キコエール」のコンセプトモデル*1を、有限会社日本音響研究所・株式会社ノボル電機・株式会社quantumと共同で開発しました。12月4日(木)、12月9日(火)には、『「盛り上がる忘年会シーズンに、もしも地震がきたら?」飲食店スタッフ向け防災セミナー』を、公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」新宿東口店で開催します。
*1 技術や未来の可能性を探る位置づけのため、実用性や耐久性、耐火性などは考慮していません

事前調査①│飲食店でお酒を飲んでいる時の防災に関する意識調査

調査概要│調査期間:2025年11月11日(火) / 調査方法:インターネット調査 / 調査対象:日常的に飲食店でお酒を飲む全国の20代〜60代男女300名

その①│65.3%の人が、飲食店でお酒を飲んでいる最中に災害が起こることを想像したことがない
その②│約半数の人が、普段の酔っている状態で安全確保や避難行動に対応できないと考えている

日常的に飲食店でお酒を飲む全国の20代〜60代男女300名に、飲食店でお酒を飲んでいる最中に災害が起こることを想像したことがあるかと聞いたところ、65.3%の人がない(ない・あまりない)と回答しました。多くの方が災害が起きることを想定せずに飲食店を利用していることが分かりました。
 また、飲食店で普段酔っている状態の時に災害が起きたとすると、安全を確保する行動や必要に応じて避難する行動をできると思うか聞いたところ、約半数の人が対応できない(全くできない・あまりできない)と回答しました。不慣れな場所である飲食店において、利用客の半数が適切な防災行動ができない可能性が高いことが示唆されました。

その③│酩酊期に店員などによる声かけに気づかないと思っている人が爽快期の5倍以上いる

日常的に飲食店でお酒を飲む全国の20代〜60代男女300名に、飲食店でお酒を飲んでいる最中に災害が起こることを想像したことがあるかと聞いたところ、65.3%の人がない(ない・あまりない)と回答しました。多くの方が災害が起きることを想定せずに飲食店を利用していることが分かりました。
 また、飲食店で普段酔っている状態の時に災害が起きたとすると、安全を確保する行動や必要に応じて避難する行動をできると思うか聞いたところ、約半数の人が対応できない(全くできない・あまりできない)と回答しました。不慣れな場所である飲食店において、利用客の半数が適切な防災行動ができない可能性が高いことが示唆されました。

(参考)4段階の酔いの特徴
爽快期  :頬が少し赤くなる、気分が少し高揚する
ほろ酔い期:脈拍数が速くなる、理性が薄れる
酩酊初期 :気が大きくなる、立てばふらつく
酩酊期  :千鳥足になる、呼吸が速くなる、吐き気が起きる

事前調査②│お酒を提供している飲食店の災害対策および飲酒時の被災意識に関する調査

調査概要│調査期間:2025年11月11日(火)~13日(木) / 調査方法:インターネット調査 / 調査対象:お酒をメニューとして提供している飲食店のオーナーまたは店長200名

その①│72.5%の飲食店が防災マニュアルを用意していない
その②│酔っているお客様に対する声かけについて、41%は想定できておらず、38.5%は想定していても対応方法が決まっていない

お酒をメニューとして提供している飲食店のオーナーまたは店長200名に、防災マニュアルを用意しているか聞いたところ、72.5%が用意していない(用意していない・以前はあった)と回答しました。多くの飲食店において災害発生時の対応方法のマニュアル化が進んでいないことが分かりました。
また、酔っているお客様に対する災害発生時の安全確保の声かけの対応を想定できているか聞いたところ、41.0%が想定できていない、38.5%が想定していても対応方法が決まっていない、と回答しました。声かけ相手が酔っているという特殊な状態を想定した対応が進んでいないことが伺えます。

その③│酔っているお客様に対する安全確保の声かけで難しいと感じる点1位「指示に従わない・動かない」「適切な声かけ・避難誘導がわからない」

酔っているお客様に対する安全確保の声かけについて難しいと感じる点を聞くと、1位に「指示に従わない・動かない」「指示が理解されない・伝わらない」、3位に「適切な声かけ・避難誘導がわからない」という結果になりました。飲酒者に理解され、行動につながる具体的な声かけの方法が求められていると考えられます。

プロジェクト第一弾のテーマ:「酒場における安全確保の声かけ」
不慣れな環境であることや飲酒による判断力・運動能力の低下を考慮した防災行動が重要

日本は世界有数の地震大国であり、首都直下地震は2025年1月15日時点で30年以内に70%程度の確率で発生、南海トラフ地震は2025年9月26日時点で30年以内に60〜90%程度以上の確率で発生する*2と言われており、国民一人ひとりの防災意識の向上が常に求められます。これまでの防災対策は自宅や職場での備えに重点が置かれてきましたが、自宅や職場と比較して偶発的な居場所である酒場での防災対策は限定的でした。酒場は、利用客にとって自宅や職場とは異なり不慣れな場所である可能性が高いことに加えて、飲酒によるアルコールの作用によって、判断力・理解力・運動能力が低下していることが想定されます。したがって、利用客が自主的に的確な避難行動をとれるとは限りません。酒場従事者には、自身の命を守ることを大前提に、利用客が特殊な状況に置かれていることを踏まえた適切な安全確保の声かけをすることが求められます。そこで、本プロジェクトにおける第一弾のテーマを「酒場における安全確保の声かけ」としました。
SNSでのソーシャルリスニングや有識者へのヒアリング、意識調査の結果も踏まえて、「酒場における安全確保の声かけ」を啓発していくうえで、2つの問題が挙げられます。1つ目の問題は「酒場における適切な安全確保の声かけの方法が分からないこと」、2つ目の問題は「酒場のような騒音環境下で声が届きづらいこと」です。2つの問題に対して本プロジェクトでは、それぞれ対応策を考えました。
*2地震調査研究推進本部地震調査委員会による発表

北海道文教大学 當瀬規嗣教授(生理学)
「アルコールは判断力・理解力・運動機能を抑制 酔客への的確な安全確保の声かけが重要」

北海道文教大学 當瀬規嗣教授 プロフィール
人体の機能全般を研究する生理学を専門としている。生理学を学生に教授するだけでなく、広く一般市民にもわかりやすく生理学を伝える執筆、講演活動を行っている。著書に「clinical生体機能学」(南山堂)、「よくわかる生理学の基本としくみ」(秀和システム新社)、「真健康論」(毎日新聞)他。北海道新聞に「生きるしくみ」と題したコラムを2006年から連載中。テレビ、ラジオ出演多数。1959年、北海道生まれ。医師、札幌医科大学名誉教授、北海道文教大学教授

お酒に含まれるアルコールは、脳に対して麻酔薬のような作用を示し、脳機能を抑制します。ほろ酔いの状態は、すでに抑制は起こっているとみなすことができ、判断力、理解力、運動機能は低下し始めています。したがって、酒場で災害が発生した場合、客が自主的に的確な避難行動をとれるとは限らないわけです。以上のことより、災害の際には酒場従事者による的確な安全確保や避難方向などの声かけが重要と考えられます。時には短い文による命令口調で伝えないと、酔客は理解できない危険性があります。また、酔客は音声情報に対する理解力が落ちている危険性があるので、大きな声で、聞き取りやすい明瞭な発音に心がけることも大事でしょう。

備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー 高荷智也氏
「飲酒時の災害対策は事前防災が極めて重要 飲酒者を想定した酒場側の防災計画の準備を」

備え・防災・BCP策定アドバイザー 高荷智也氏プロフィール
合同会社ソナエルワークス 代表。「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「自分と家族が死なないための防災対策」と「中小企業のBCP策定」のポイントを体系的に解説するフリーの防災専門家。大地震や感染症など自然災害への備えから、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に定評があり、講演・執筆・メディア出演の実績も多い。防災YouTuber、Voicyパーソナリティとしても活動する。

災害対策は待ったなし

事前に危険が報じられる水害と異なり、大地震は必ず突発的に生じるため、事前対策の有無や、発災直後の行動がそのまま生死に直結します。そんな大地震に「一番巻きこまれたくないタイミング」はいつでしょうか。入浴中、トイレの中、自動車の運転中、いずれも避けたいシチュエーションですが、ここで「飲酒中」をイメージできる人は少数ではないかと思います。
自然現象は人間の都合に関わりなく発生します。2023年の能登半島地震は「5月5日」のこどもの日に、2024年の能登半島地震は「1月1日」の元日に発生しました。近い将来の発生が想定される、首都直下地震や南海トラフ地震はもちろん、日本では「いつでも・どこにでも」大地震が発生しますが、こうした地震が「飲酒中」に生じないという理由はありません。

イレギュラーへの備えは社会的に価値がある

地震対策の多くは、「よくありそうな」「多くの人が関わる」シチュエーションを前提に行われ、「イレギュラー」や「少数人数」を対象としたシチュエーションの優先順位は後まわしになりがちです。大地震単体への備えはどこでも行われますが、「大地震と台風が同時に来る」状況は想定外になるでしょう。ネコがいる家庭の防災は多くの方が取り組まれますが、ペンギンを飼育している方の防災は自己責任となるはずです。しかし、こうしたイレギュラーへの取り組みがあれば、それは関係者にとって大変ありがたいものになります。

では「飲酒中の大地震」はイレギュラーと言えるのでしょうか。子どもやお酒を飲まない方にとっては「想定外」にしてよいケースですが、多くの方にとっては意外とあり得るシチュエーションであるはずです。この「誰にでもありうるが、あえて注目されなかった」領域について、ビール製造メーカーが踏み込むというのは、実は多くの愛飲者が待ち望んでいた、大変社会的な意義のあることだと言えます。

飲酒時の防災の基本

飲酒時の防災、とりわけ突発的に生じる「大地震」などへの備えは、どのように行うべきでしょうか。防災の最大の目的は「命を守ること」で、大地震の場合は「揺れで即死をしない」「津波や火災などからすばやく逃げる」ための準備が重要です。一方、大地震が発生してから行える対策はほとんどなく、事前対策の有無と内容が大地震直後の明暗を分けることになります。

飲酒時の地震対策で最重要なことは「安全な場所でお酒を飲む」ことです。建物がつぶれず家具や什器が転倒してこなければ、飲酒中でも命は守られます。逆に建物倒壊などが生じた場合は、飲酒の有無に関わらず命を落とすことになります。すばやく避難をするためにも建物と室内の安全対策が重要です。飲食店における地震対策では、まず店舗の建物と室内の安全が確保されるかを確認することが重要なのです。

その後、津波や火災が生じた場合はすばやい避難が必要に。逆に建物が安全であればその場に留まることが重要ですが、いずれの場合も店舗から顧客に対する適切な「声によるアナウンス」が必要となります。

今回のプロジェクトでは、こうした事前対策の判断方法や、シチュエーションに合わせた声かけ方法について、ガイドラインや道具の開発を通じて飲食店へ普及させることを目的にしています。おいしいお酒を楽しく、そして安心して飲める環境が増えることを、一個人の愛飲家としても願っております。

<問題①│「酒場における適切な安全確保の声かけの方法が分からない」>
「酒場のための地震防災ガイドライン」を防災の専門家監修のもと策定
作成ページをWEBでも公開 2,432通りの中から自店舗にあわせたガイドラインを作成可能

適切な安全確保の声かけをするためには、自身が従事する酒場の建物・地理的情報を事前に認識しておくことや、地震発生時後に迅速かつ正確な情報収集をすることが必要です。しかし、その具体的な方針は今まで示されていませんでした。そこで、酒場で地震が発生した際に注意すべきポイントや適切な安全確保の声かけの仕方が分かる「酒場のための地震防災ガイドライン」を、備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー高荷智也氏監修のもと策定しました。

自身が従事する酒場の耐震性・地理的情報・店舗環境・店舗設備・顧客特性をWEB上で選択していくことでオリジナルの地震防災ガイドラインを生成することができます。生成したガイドラインには、地震の状況や段階に応じて注意すべきポイントと飲酒者を想定した安全確保の声かけの例が表示されます。画像で保存いただくことでいつでもご覧いただくことができます。100%安全を保証するものではありませんが、自店舗に合わせて、地震が起きたらどこに危険があるか、どんな対策・対応ができるかを考えるきっかけとして活用いただきたいです。なお、全部で2,432通りのガイドラインを作成可能です。
公式サイト:https://yonayonaale.com/bousai/

お酒飲用者に対する安全確保の声かけで重要な7つのポイント

酒場のおける飲酒者に対する安全確保の声かけにおいて気をつけるべきポイントを7つにまとめました。北海道文教大学當瀬規嗣教授、備え・防災/BCP策定アドバイザー 高荷智也氏にヒアリングするとともに、実際に飲酒している被験者への声かけに対する反応を観察する自社調査を通じて整理しました。

・何をすれば良いのか、短く明確に話す
・1つの文章に動作は1つまでにする
・目で見えたままのものを具体的に指示する
・動こうとしない人には、断定的な命令口調で指示する
・どのような危険があるのかを明確に示す
・話すスピードは意識的にゆっくり話す
・繰り返し指示する

ガイドラインの具体的な作成イメージ

<STEP.01 事前チェックポイントを確認!>

店舗が該当する条件の有無をご確認いただきます。

・旧耐震の建物かどうか
・津波浸水想定区域かどうか
・土砂災害警戒区域・特別警戒区域かどうか

※複数該当する場合は、それぞれ作成いただき内容をご確認ください

<STEP.02 店舗別の特徴を選択!>

店舗形態や顧客特性で該当する項目の有無をご確認いただきます。

店舗環境
・広いフロア、宴会場タイプ
・個室など仕切りが多い
・ワンフロアではなく、奥まっている場所がある
・避難経路にエレベーターがある
・避難経路に階段がある
・テラス/屋外席がある

店舗設備
・カウンターや小さな机がある
・大きな窓がある
・落下しそうな照明がある
・ディスプレイ(酒瓶、吊り下げグラス、大型の植物など)がある

顧客特性
・お客さまに外国人の方がいる

<STEP3>店舗に合わせたガイドラインが完成!選択いただいた情報をもとに、店舗オリジナルのガイドラインが生成されます。自店舗に合わせて、地震が起きたらどこに危険があるか、どんな対策・対応ができるかを考えることが何よりも重要です。

※本ガイドラインを使用すれば、100%安全確保ができるというわけではありません

<問題②│酒場のような騒音環境下で声が届きづらい>
騒がしい酒場でも届きやすい高い声に変換!平時はランタンとして使えるデザイン
酒場のための防災用電子メガホン「キコエール」コンセプトモデル開発

酒場のような騒音環境下で安全確保の声かけを届けるためには、なるべく大きく、高い声を出すことが有効です(※メカニズムについては後述)。しかし、地声で出せる声の大きさ・高さには限界があります。そこで、大きい音に出力できるだけでなく、発声した声が酒場でも届きやすい3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する高い声に変換される、酒場のための防災用電子メガホン「キコエール」のコンセプトモデル*2を日本音響研究所・ノボル電機・quantumと共同で開発しました。店の奥にしまわれがちな防災グッズを、いざという時にも使っていただけるよう、平時は店内にも馴染むランタンのような照明として利用できる設計にしています。現在「キコエール」の販売は予定しておりませんが、飲食店の方に実際に体験いただく機会として飲食店向けのセミナー兼体験会の実施や1月中旬頃から酒場向けに貸し出しも予定しています。貸し出しの応募受付は、12月4日(木)に公式サイトにて開始します。
【飲食店様向け「メガホン」お貸出し受付フォーム:https://jp.surveymonkey.com/r/NX83BSJ】

<音声変換機能に関する実証結果①>
騒がしい音環境下で声を届けるには3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分が重要
なるべく大きく、高い声を出すことで利用客に声が届きやすくなる

日本音響研究所がBGMや会話で騒がしい店舗*3で音を分析をしたところ、600ヘルツ・3,500ヘルツ・10,500ヘルツを中心とする周波数帯に音のエネルギーが集中し、山(極大)を持つことが分かりました。災害発生後の店内においても不特定多数の利用客の声が行き交い、同様の音環境になることが想定されます。このような環境下において、利用客に安全確保の声かけを届けるためには、大きい音を出すことを前提に3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分が強い声を出すことが有効であることが示唆されました。男性・女性に関わらずなるべく高い声を発声することで、3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する声の成分(倍音)が強くなります。また、高い声を発声する(声帯の振動数を高める)ことで、肺からの空気量が多くなり音圧が上昇するので、大きな声を出すこともできます。
*3 「YONA YONA BEER WORKS」新宿東口店・恵比寿東口店・新虎通り店

<音声変換機能に関する実証結果②>
3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する声に変換するメガホン

地声で出せる声の大きさ、高さには限界があるため、声の倍率を変換する技術をノボル電機に提供いただき、大きい音を出力するだけでなく、3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する声に変換できるメガホンの開発を進めました。日本音響研究所と共同で実施した実験*4の結果、酒場のような環境下において、男性は1.30倍、女性は1.25倍の倍率の声が聴こえやすいことが示唆されたことから、コンセプトモデルには1.30倍、1.25倍、1.10倍、等倍の設定を用意しています。将来的には、発声した声に応じて自動で適切な声に変換される装置の開発が望まれます。

*4 酒場の騒音環境下において発声者役の男女一名ずつが、8段階の倍率(等倍~1.75倍)ごとに発声した単語を飲酒した被験者18人が聞き取るテストおよび、集音したそれぞれの音の分析。実験において発声した男性・女性は、発音した音の響きがブレずにしっかり出すことができるスタッフで実施しています。プロジェクトメンバーの中から、発音のブレなさの指標となる母音のフォルマント周波数(声道の共鳴によって強調される周波数)が最も平均値に近いスタッフを選びました。

有限会社日本音響研究所 所長 鈴木 創氏
「落ち着いて、いつもより少し高めの声で、はっきりと短い言葉で伝えることが重要」

有限会社日本音響研究所 所長 鈴木 創 氏プロフィール
声紋鑑定・音響分析の専門家として、警察・検察・裁判所弁護士などから事件・事故の録音解析や法廷鑑定を多数依頼されるほか、テレビ番組での音の検証・解説・監修でも知られる。犬の鳴き声を解析するデバイス『バウリンガル』でイグノーベル平和賞を受賞し、赤ちゃんのぐずり泣き対策グッズ『赤ちゃんケロッとスイッチ』などの商品開発にも携わる。近年は、津波警報時のアナウンスの伝え方に関するNHKとの共同研究や、電話を用いた特殊詐欺対策など、防災・防犯分野でも「音の力」を生かした発信を行っている。

酒場環境における音の問題

「YONA YONA BEER WORKS」で採取した音サンプルから考察される酒場特有の音の特徴
今回、「YONA YONA BEER WORKS」複数店舗で店内の音環境を収録し、音響特性を調べるため音圧レベル測定、周波数分析を行いました。その結果、酒場特有のざわめきや食器音、BGMなどが重なり合うことで、およそ600Hz、3,500Hz、10,500Hz付近に音のエネルギーが集中し、「山(極大)」を形成していることが分かりました。これらの帯域は人の声の成分とも重なりやすく、通常の話し声や呼びかけが周囲の騒音に埋もれてしまう一因となります。

災害が起きたときに考えられる問題
地震などの災害が発生した際、店内はさらに騒然となり、叫び声や物音が加わることで、ただでさえ騒がしい酒場の音環境は一層カオスな状態になります。その中で「避難してください」「ここは危険です」といった安全確保のための声かけをしても、周囲の騒音と同じ帯域にある声はかき消され、お客様に届かない恐れがあります。結果として、避難誘導の遅れ、また一部の人にしか情報が届かないなど、安全上の重大なリスクにつながる可能性があります。

音の観点で災害時に酒場で意識するべきこと

高い声をなるべく出すことの重要性
人の声は、低い声よりも、やや高めの声のほうが酒場特有の騒音帯域を避けやすく、相対的に聞き取りやすくなります。今回の検証では、通常より少し高い声にすることで、声の成分が騒音の“すき間”に分布し、安全確保の呼びかけが相手に届きやすくなる可能性が示されました。災害時には、落ち着いて、いつもより少し高めの声で、はっきりと短い言葉で伝えることが重要だといえます。

高い声が出せるメガホンの意義と将来への期待
高い声を強調できるメガホンを活用することで、騒がしい店内や災害発生時の混乱の中でも、避難誘導の声をより遠くまで、かつ明瞭に届けられる可能性があります。酒場特有の騒音帯域を避けて声を届けやすくすることで、「聞こえない」ことによる安全上のリスクを減らすことが期待できます。さらに、このようなメガホンが店舗に常備されていること自体が、「万が一のときにも適切な声かけと誘導が行われる」という安心感につながり、お客様がより安心してお酒を楽しめる店としての新しい価値観の提供にも寄与すると考えています。

株式会社ノボル電機
ノボル電機は創業以来80年「安心される専門メーカー」という理念を掲げ、「安全」を届け「安心」を作る音の専門メーカー。スピーカー・アンプ・マイク・メガホン等の拡声用音響装置を主に製造・販売し、防災行政無線用や緊急車両向けの拡声器など防災関連にも強い。メガホンでは消防や警察に採用されている防水軽量・耐衝撃型のプロ仕様から、蓄光型などのユニークなタイプも開発している。近年では、本プロジェクトのような新規特注案件にも注力し、開発や受託生産など幅広く事業を展開している。

 

株式会社quantum
quantumは、クリエイティビティを軸にしたインキュベーション力で、新規事業開発、ベンチャークリエーション、ハンズオン投資によるグロース支援を行うスタートアップスタジオです。2016年の創業以来、100社を超える企業、大学などとインキュベーションを実践しています。これからもventure buildersとして、① 新規事業のインキュベーション、② ベンチャークリエーションとグロース支援、③デザイン&エンジニアリングの3つの事業セグメントを重ね合わせて「世界を変えるインパクトのある新規事業の創造」に挑戦していきます。
quantumについて ( https://www.quantum.ne.jp )

忘年会シーズンに酒場スタッフ向け防災セミナー兼体験会を開催

『「盛り上がる忘年会シーズンに、もしも地震がきたら?」飲食店スタッフ向け防災セミナー』を、公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」新宿東口店にて12月4日(木)、12月9日(火)11:00~12:00に開催します。飲食店経営者・スタッフの皆さまに向けて、「お酒好きの方への防災」を楽しくまじめに学べるセミナーです。意外と考える機会が少ない、酒場での防災。地震が来た時、お酒を飲んでいるお客様はどんな点が危険なのか?どのように声かけをすればいいのか?を学べます。酒場のための防災用電子メガホン「キコエール」の体験会や「酒場のための地震防災ガイドライン」でオリジナルのガイドラインを作成するワークショップを実施する予定です。

セミナー応募フォーム:https://jp.surveymonkey.com/r/S8SVKJF
・応募締め切り:12月8日(月)昼12:00
・各回:20名(先着順)
・参加料金:無料(ビール3杯+軽食)

飲み会イベントを実施してきた立場から「安全確保のための声かけ」に着目

ヤッホーブルーイングは、「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに掲げ、ビールファンにささやかな幸せをお届けしたいという想いで日々活動をしています。「お酒好きのための防災プロジェクト」は、ある日、一人のスタッフが「クラフトビールを楽しんでいる時に災害が起きたら、飲酒をしているからこそ気をつけるべきポイントがあるのではないか」と気づき立ち上げたプロジェクトです。

ヤッホーブルーイングでは、2010年から公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」をはじめとする多くの酒場で飲み会イベントを実施してきました。クラフトビールを通じた楽しい場を企画・提供する中で、賑やかな店内ではスタッフの声が届きにくく、飲酒している利用客に話している内容が伝わりづらい場面に何度も直面してきました。これらの経験から有事の際にも「声かけ」の工夫が必要なのではないかという気づきに繋がりました。

ヤッホーブルーイングでは事業所ごとに年1回実施する避難訓練は、原則参加を必須とし、日頃からスタッフ一人ひとりの防災意識を高める活動をしています。本プロジェクトを皮切りに、自社の事業所やイベントに限らず、酒場での防災意識の向上に取り組んで参ります。

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